TOTOの新機能「便スキャン」は、住宅設備の未来を変えるかもしれない

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TOTOが2025年8月に発売した新しいトイレ「ネオレストLS-W/AS-W」には、ちょっとびっくりするような新機能が搭載されました。その名も「便スキャン」

これまでトイレといえば、節水性能や清掃性、デザイン性が注目されてきましたが、TOTOはそこに“健康”という新しい価値を付け加えました。

日常の排便をただ流すだけでなく、健康の「見える化」に活用しようというアプローチです。

「便スキャン」とは?

ウォシュレットノズルの隣に格納されたセンサーが、便にLED光を照射し、その反射を解析することで、排便の「形」「量」「色」を自動でスキャン。結果はスマートフォンのアプリ「TOTOウェルネス」と連携して記録され、便の状態から生活習慣のアドバイスが表示される仕組みです。

形状は7タイプ、量は少・中・多の3段階、色も黄土系・茶系・焦げ茶系などに分類され、毎日の健康管理に役立てることができます。プライバシーには配慮され、便そのものを画像で撮影したり保存するわけではありません。もちろん、使用者の登録や識別も簡単なボタン操作だけで可能です。

まさに“座るだけ”で健康チェックが始まる時代の到来です。

詳細はメーカーHPにてご確認ください。

注意点

「便スキャン」は、医療目的ではなく健康管理の補助を意図した仕様で、医療的な助言・診断・治療目的として使用できる訳ではありません。そのあたりは今後の進化に期待しましょう。

住宅設備は“健康支援”という新しい役割へ

これまで住宅設備における「健康」といえば、高断熱・高気密によるヒートショック対策や結露対策、換気によるアレルゲン除去が中心でした。

しかし今後は、こうした環境改善型のアプローチに加えて、排泄や顔色、心拍など「人間の生理的な情報」をリアルタイムでセンシングし、可視化して健康を支援する流れが加速するかもしれません。

例えば「顔色・血流・心拍・表情から健康状態を分析するミラー」とか(10年くらい前にパナソニックのショールームで参考展示を見たなぁ。あれは商品化しなかったのかな…)、「脈拍・体重・筋肉量を計る家具」とかですかね。

AIやIoTの進化によって、トイレや洗面台、ベッドなどが“家庭内ヘルスチェックステーション”になる未来もそう遠くないのかもしれません。

便スキャンに補助金が出たら、おもしろいよね

「便スキャン」のような健康支援設備に補助金が出たら、ちょっとおもしろくないですか?

「便」で健康を守る時代。しかも、“座って出すだけ”で体調の傾向が見えてくるなんて、冷静に考えてもなかなかのイノベーションです。

節水型トイレとしての補助金や、バリアフリー・介護保険を使った住宅改修制度など、間接的な補助を受ける道はあるものの、こういう“におい”のある(?)健康支援技術に、もっと光が当たってもいいのではと、個人的には思います。作ったのが日本の企業というのもポイント高いです。

なにより、健康寿命の延伸は国の重要課題の一つ。医療費の抑制や人手不足の緩和にもつながる可能性があるのなら、補助金を出す価値は充分あるんじゃないでしょうか。

太陽光よりも、こういう技術にこそ補助金を

住宅系の補助金といえば、やはり「太陽光発電」が真っ先に思い浮かびます。

太陽光発電が本当に環境に良いのかどうかの議論はさておき、少なくとも日本の内需を元気にし、国民の健康寿命を延ばすような技術には、もっと補助金を出してもよいのではないでしょうか。

そりゃまだ実績もありませんし、健康効果も個人差が大きいでしょうから定量的に評価しづらいですし、政策評価や予算執行の正当性が示しにくいのは理解できます。

でも、便スキャン付きトイレは、ゲームチェンジャーとまでは言いませんが、じわじわと社会全体に良い影響を及ぼす可能性がある、と私は思います。

個人の健康意識を高め、日々の小さな不調に気づきやすくなり、それが結果的に医療費の削減につながる。働ける人が少しでも増えれば、慢性的な人手不足に悩む現代社会にとってもありがたい話です。

おわりに

断熱材やサッシ、太陽光といった「建物性能」だけでなく、「人の内面」を見守る設備にも目を向けるべき時代の到来を感じます。

“家は住むだけのもの”から、“健康を守る器”へ。そんな未来を、便スキャンのような技術がそっと後押ししてくれるかもしれません。

トイレが変われば、暮らしが変わる。そんな住宅設備の進化を、これからも応援していきたいと思います。

筆者:ともぴ(一級建築士/インテリアコーディネーター)
「家づくりは、賢く・楽しく・ちょっとあざとく」をモットーに、失敗しない家づくりのヒントをブログで発信中。