「最近、GX ZEH(ジーエックス・ゼッチ)ってよく聞くけど、一体何なの?」
「これから家を建てるなら関係あるの?」
そんな疑問を持つ方も多いと思います。
実は、2027年度から、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の基準が大きく変わる予定です。
新たに登場する「GX ZEH」は、これまでのZEHをさらに進化させた“次世代の省エネ住宅基準”です。
この記事では、GX ZEHとは何か、今までのZEHとどう違うのか、そして住宅会社や家を建てる施主(あなた)にどんな影響があるのかを、わかりやすく解説します。
特に注目すべきは、「蓄電池が必須化される」という大きな変更点。
これはつまり、太陽光発電も実質的に必須になるということを意味します。
未来の家づくりを考えるうえで避けて通れない「GX ZEH」。
後半では、住宅のプロとして私が感じる“ちょっと気になる懸念点”についても率直にお話しします。
ぜひ最後までご覧ください。
GX ZEHとは?

GX ZEHとは、現行のZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の基準をさらに強化し、省エネ性能の向上と再生可能エネルギーの自家消費拡大を柱とした、次世代の住宅性能基準です。
「GX」は「グリーントランスフォーメーション(Green Transformation)」の略で、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを意味します。
つまりGX ZEHは、断熱性能を高め、高効率な設備と蓄電池を組み合わせて、エネルギーを自給自足し、環境負荷を限りなくゼロに近づける家のことです。
なぜ基準が変わる?

政府は「2050年カーボンニュートラル」の実現を目標に掲げています。
日本のCO₂排出量の約15%は家庭から出ており、住宅の省エネ化は避けて通れません。
政府の主な目標は以下の通りです。
- 2030年度以降:新築住宅はZEH水準を確保(義務化)
- 2050年までに:既存住宅を含めたストック全体でZEH水準を確保
これらを実現するため、ZEHの基準を引き上げ、より高性能な住宅を普及させる狙いがあります。
要するに、これまでの計画では削減目標の達成が難しいため、新築住宅の省エネ基準を引き上げて、家庭部門のCO₂排出量を“数字上”底上げしようという狙いです。
なお、今のZEH基準は、数年後には「建てられる最低ライン」になります。つまり、GX ZEHがこれからの“当たり前”になるということです。
いつから始まる?
新基準「GX ZEH」の認証は、2027年4月(2027年度)から開始される予定です。
現行ZEHの新規認証は2028年3月末までで終了します。
経過措置はありますが、実質的には2027年以降の新築住宅はGX ZEHが前提となります。
【ここが重要】”ZEH”と”GX ZEH”の違い
項目 | 現行ZEH | GX ZEH |
---|---|---|
断熱性能 | 等級5 | 等級6 |
一次エネルギー消費量削減率(再エネ除く) | 20%以上 | 35%以上 |
必須設備(戸建て) | なし | HEMS+蓄電池(+太陽光発電) |
ポイント1:断熱性能が「等級6」に
これまでの「等級5」から、最高レベルの等級6へ基準が引き上げられます。トリプルガラスや高性能断熱材などの採用が必須となり、夏は涼しく冬は暖かい、健康的で快適な住環境が実現します。
ポイント2:省エネ削減率が「35%」に
エアコンや給湯器などの高効率化によって削減するエネルギー量が、20%から35%に引き上げられます。国の基準「一次エネルギー消費量等級」で最上位クラスを超える水準です。
ポイント3:蓄電池(と太陽光発電)が必須に

GX ZEH最大の特徴がここ。
「HEMS(エネルギーマネジメント)」と「蓄電池」が必須化されます。
省エネ視点で見ると、蓄電池を効率的に使うには昼間に太陽光で発電した電気を貯める仕組みが前提です。(電力会社の電気を買って蓄電池に貯めても省エネではないですからね笑)
つまり、蓄電池が必須=太陽光発電も必然的に必須ということ。
これにより、電気を「売る」より「自家消費」する流れが主流になり、災害時にも蓄電した電力で生活を続けられる、といった“エネルギー自立型の家”がスタンダードになります。
住宅会社への影響
- 設計・施工レベルの底上げが必須
断熱等級6を安定的に満たすため、高度な施工管理が必要です。 - エネルギー知識の強化
太陽光・蓄電池・HEMS・EV(V2H)などを理解し、
お客様に分かりやすく説明できる力が求められます。 - GX ZEH非対応=資産価値リスク
今後は「GX ZEHじゃない=古い家」という評価がつく可能性も。
施主(これから家を建てる人)への影響
メリット
- 光熱費の大幅削減:自家消費で実質ゼロも可能
- 快適で健康的な室内環境:温度差の少ない空間に
- 災害への強さ:停電時も蓄電池で生活可能
- 補助金や税制優遇:GX志向型住宅への補助はZEHより手厚い
- 資産価値の維持:「高性能な家」として長期的に評価される(はず)
デメリット・注意点
- 初期コスト上昇:高断熱材・蓄電池・HEMSの導入コスト増
→ ただし補助金と光熱費削減で中長期的に回収可能(なはず)。
本当に“未来のため”になっているのか?

政府が「○○年までに温室効果ガスを○○%削減」と目標を掲げること自体は意義があります。
ただ、その数字を“達成すること”が目的化してしまうと、太陽光パネルの廃棄問題のように「本末転倒」になりかねません。
本当に自然環境を改善し、持続可能な社会をつくる計画なのか。それとも「数字合わせ」のための急ごしらえなのか。この基準改定で儲かるのは誰なのか。大きな利権が絡んでいないか。
このあたりが明確でなければ、私たち住宅会社の立場でも、お客様に自信をもって「GX ZEHが本当におすすめです」とは言い切れません。
GX ZEHは未来のスタンダード

GX ZEHへの移行は、単なる規制強化ではなく、より快適で、経済的で、災害に強く、環境にも優しい家づくりへの進化です。ただし、“未来のための仕組み”であるためには、目的(環境改善)と手段(省エネ技術)がしっかり一致していることが大前提。
これから家を建てる方は、GX ZEHに詳しい住宅会社をパートナーに選び、「本当に未来に残せる家づくり」を一緒に考えていきましょう。
筆者:ともぴ(一級建築士/インテリアコーディネーター)
「家づくりは、賢く・楽しく・ちょっとあざとく」をモットーに、失敗しない家づくりのヒントをブログで発信中。