なぜ地盤調査が必要なのか|安全と堅実な建築の礎

きそ知識

地盤調査とは、その地盤の地耐力や地質、支持地盤の深さなどを調べることです。

ちょっと難しい感じがしますが、簡単に言うと「家が傾かないような、しっかりとした地面かどうかを調べる」という理解でおおむね問題ありません。

先端がスクリュー状になっている鉄の棒に荷重を掛け、回しながら地面に差し込んでいく試験方法が一般的です。あんがい原始的ですよね。

地盤調査は、工事の着工前に行います。もし調査した後に建物の形状や建物の配置寸法に変更があった場合は、再調査が必要です。(数十センチくらいの配置の変更であれば、再調査不要という判断をする設計者もいるかもしれません。)なので、地盤調査は建物の配置計画が決まった後で行いましょう。

ちなみに、地盤調査をすることで、擁壁の底版がどのあたりまで敷地に入り込んでいるかや、運良くガラ(コンクリートなどの地中埋設物)の発見がされる、なんてこともあります。

今回は地盤調査について詳しく解説します。

なぜ地盤調査が必要なのか

なぜ地盤調査をするのか…

それは、将来に渡ってその建物を安全に使用できるようにするため…というのはもちろんなのですが、それを具体的に設計者目線で見るとこうなります

なぜ地盤調査をするのか…

それは、地盤の性質が分からないと建物の基礎の仕様が決められないからです。

建物の設計者には「地耐力に応じた基礎の仕様を選定する義務」が課せられています。地耐力(地盤の許容応力度とも言います)とは、地盤がどのくらいの荷重に耐えられるかを示す値のことで、主に地盤調査により求めることができます。

つまり設計者は、「基礎仕様を決めたい」→「地耐力が知りたい」→「地盤調査が必要」というロジックで設計を進めるんですね。

また住宅においては、住宅瑕疵担保責任保険への加入要件として地盤調査報告書の提出を求められるため、保険に加入するためにも地盤調査は必要なものになっています。

住宅瑕疵担保責任とは

建築した住宅に瑕疵(欠陥や設計ミス)があった場合に、住宅会社が10年間にわたって損害賠償責任を負うことです。

地盤調査は義務なのか

地盤調査は、「建築基準法施行令第38条」という法律によって一部の例外を除き義務化されています。

“一部の例外を除き”と書きましたが、その例外に出会う機会はかなり稀なので、単純に「義務化されている」と覚えておいて問題ありません。

なお、建築主(施主)の義務ではなく、設計者の義務です。

地盤調査の種類

地盤調査には種類があります。主なものをまとめました。

スクリューウエイト貫入試験(SWS試験)

住宅の地盤調査で最も一般的な方法です。

「N値(地盤の強さを表す値)」に相応する「換算N値」という値を算出することができます。一般的な大きさの住宅の場合、5ヶ所程度を調査し、半日ほどで終了する作業です。費用相場は3~5万円です。

敷地全体の様子を知ることができ、費用もリーズナブルであるというメリットがあります。しかし、土質の採取ができない、ガラや一定以上の固い地層に達すると貫入不能、深度が増すと精度が低くなるなどのデメリットもあります。

チョット専門的なハナシ

「N値」と「換算N値」について

地盤調査の一番の目的は、地盤の強さを表す「N値」を求めることです。住宅程度の規模ではスクリューウエイト貫入試験を採用することが多いですが、この試験ではN値に相当する「換算N値」を求めることができます。一般的に、N値(換算N値)が大きいほど強度のある地盤といえます。

N値が分かれば基礎の仕様選定に必要な地耐力が(目安ですが)分ります。そして、地耐力の概算は以下の式で求めることができます。

地耐力(目安)=N値×10(kN/㎡)

つまり、N値が3だった場合は、地耐力は30kN/㎡程度となります。

ちなみに、1 kNは約100kgです。地耐力が30kN/㎡ということは、1㎡あたり約3tの重さに耐えられる地盤ということになります。地耐力が20kN/㎡以上の場合はべた基礎を採用することができ、30kN/㎡以上あれば布基礎を採用することができます。20kN/㎡未満の場合は地盤改良工事を行うのが一般的です。

標準貫入試験(ボーリング調査)

大規模建築物の地盤調査で用いられます。

N値、土質、地層構成、地下水位などが確認でき、室内土質試験用のサンプリングが可能です。費用相場は最低でも15万円程度です。

平板載荷試験

地盤に建物の重量に見合う荷重をかけ、沈下量を測定して支持力を判定します。

費用相場は5~10万円です。

もし地盤調査をしない住宅会社に出会ったら

あくまで私見ですが、もし地盤調査をしない住宅会社があったとしたら、その会社はあまりにも無知であるか、怖いもの知らずか、とにかく普通ではない会社だと思ってしまいます。

地盤調査をしないからと言ってそれだけで法令違反となるわけではありませんが、人が永く住む家なのだから、地盤調査くらいするのがあたり前で、それがフツーの感覚だと思います。(最近は“あたり前”とか“普通”って言っちゃいけないんでしたっけ?ちゅっ多様性♡)

地盤調査は、住む人を守るだけでなく、設計士を守るためにも必要なものなのですよ。

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