住宅の断熱材にはさまざまな種類があり、それぞれの特徴や施工方法に応じた選択が求められます。本記事では、断熱材の種類ごとの特徴、メリット・デメリット、熱伝導率、価格、経年劣化、施工性を5段階で評価したいと思います。
日本の住宅は、特に断熱性能において諸外国と比べると低いと言われています。近年になってようやく、省エネ基準の見直しや住環境の快適性向上が叫ばれ、断熱性能が注目され始めました。では、なぜこれまで諸外国より劣る断熱性能が問題視されてこなかったのか。それは、(あくまで私の個人的見解ですが)誰も声を上げず、誰も文句を言わなかったからだと思います。結果として、許容されてきた状況に甘んじ、住宅会社も積極的に改善に取り組むことがなかったのです。国もそれに合わせ、省エネ基準の引き上げを行わなかったという背景があるのではないでしょうか。(日本の断熱事情についての詳細な議論は、また別の機会に譲ります。)
1. グラスウール(一般品)
出典:旭ファイバーグラス(株)
グラスウールはガラス繊維を材料にした断熱材で、最も普及しているタイプです。一般品はコストパフォーマンスが高く、住宅に広く使用されてきました。しかし近年ではZEH等の普及により、一般品のグラスウールはオワコン化しつつあります。
メリット
防火性:不燃材で火災時の安全性が高い。
経済性:非常に安価でコストパフォーマンスに優れる。
デメリット
吸湿性:湿気を吸収しやすく、結露対策が必要。
施工の難しさ:施工時に隙間ができやすく、断熱効果が低下する可能性がある。
評価
熱伝導率:★☆☆☆☆(0.040~0.050 W/m・K)
価格:★★★★★
施工性:★★☆☆☆(隙間なく施工するための手間が多い)
経年劣化:★★☆☆☆(時間が経つと徐々に性能が低下)
適用箇所:天井、壁(充填工法)、床
2. グラスウール(高性能品)
出典:旭ファイバーグラス(株)
高性能グラスウールは、一般品よりも密度が高く、断熱性能が優れています。主に省エネ住宅や高断熱住宅で使用されます。
メリット
断熱性能:一般品よりも優れた断熱性能を持つ。
防火性:不燃性を持っており、安全性が高い。
デメリット
施工の難しさ:高い性能を発揮するためには、専門的な施工が必要。
吸湿性:結露対策が必要な点は一般品と同じ。
評価
熱伝導率:★★★☆☆(0.030~0.038 W/m・K)
価格:★★★★☆
施工性:★★☆☆☆(性能を引き出すための正確な施工が必要)
経年劣化:★★★☆☆
適用箇所:天井、壁(充填工法)、床
3. ロックウール
ロックウールは天然の岩石を高温で溶かして繊維状にした断熱材で、耐火性能が高いのが特徴です。
メリット
耐火性:非常に高い耐火性能を持つ。
防音効果:優れた防音性能を持ち、快適な室内環境を保つ。
デメリット
吸湿性:湿気を吸収しやすく、結露対策が必要。
重量:比較的重いため、施工に手間がかかることがある。
評価
熱伝導率:★★☆☆☆(0.035~0.045 W/m・K)
価格:★★★★☆
施工性:★★☆☆☆(重く隙間なく施工するのが難しい)
経年劣化:★★★★☆
適用箇所:天井、壁(充填工法)、床
4. ポリスチレンフォーム(EPS, XPS)
出典:(株)カネカ
ポリスチレンフォームは発泡スチロールを加工した断熱材です。EPS(ビーズ法ポリスチレンフォーム)とXPS(押出法ポリスチレンフォーム)があり、床の断熱材や外張り断熱材として主に使われます。
メリット
高断熱性能:断熱性能が高く、外張り工法に適している。
耐水性:吸水率が低く、湿気による影響を受けにくい。
デメリット
防火性:燃えやすく、追加の防火対策が必要です。
環境負荷:製造過程での環境負荷が高めです。
評価
熱伝導率:★★★☆☆(0.030~0.040 W/m・K)
価格:★★★☆☆
施工性:★★★★☆(軽量で施工が簡単、隙間ができにくい)
経年劣化:★★★☆☆
適用箇所:屋根、壁(充填工法、外張工法)、床、基礎
5. セルロースファイバー
出典:(株)デコス
セルロースファイバーは再生紙を主原料としたエコフレンドリーな断熱材です。吹き付け工法で使用されることが多く、壁や天井に隙間なく充填できます。
メリット
環境に優しい:再生紙から作られており、エコロジーな断熱材。
防音性能:高い防音効果がある。
デメリット
吸湿性:湿気を吸収しやすく、カビのリスクがある。
施工コスト:吹き付け工法が必要で、施工費用が高くなる。
評価
熱伝導率:★★★☆☆(0.035~0.040 W/m・K)
価格:★★☆☆☆
施工性:★★★★★(吹き付けで隙間なく充填しやすい)
経年劣化:★★★☆☆
適用箇所:天井、壁(充填工法)
6. ウレタンフォーム(押出タイプ)
出典:アキレス(株)
押出タイプのウレタンフォームは、工場で製造されたパネル状の断熱材です。外張り工法に使用されることが多く、非常に高い断熱性能を持ちます。
メリット
高断熱性能:非常に高い断熱効果を持ち、気密性にも優れる。
耐久性:長期間にわたり効果を持続する。
デメリット
コスト:比較的高価。
硬さ:硬くて加工が難しいことがある。
評価
熱伝導率:★★★★☆(0.025~0.035 W/m・K)
価格:★★★☆☆
施工性:★★★★☆(工場製品のため品質が安定しており、施工がしやすい)
経年劣化:★★★★☆
適用箇所:屋根、壁(充填工法、外張工法)、床、基礎
7.ウレタンフォーム(吹付けタイプ)
出典:(株)日本アクア
吹付けタイプのウレタンフォームは、現場で隙間なく充填できる施工方法が特徴です。充填工法に使用され、非常に高い断熱性能を発揮します。
メリット
高断熱性能:隙間なく施工でき、非常に高い断熱効果を持つ。
気密性:断熱材が構造に密着し、気密性が高い。
デメリット
施工コスト:専門業者による施工が必要で、施工費用が高くなる。
経年劣化:長期的に見て劣化する場合がある。
評価
熱伝導率:★★★★☆(0.025~0.035 W/m・K)
価格:★★☆☆☆
施工性:★★★★★(隙間なく充填可能、ただし専門技術が必要)
経年劣化:★★★☆☆
適用箇所:屋根、天井、壁(充填工法)、床、基礎
8. フェノールフォーム
出典:旭化成建材(株)
フェノールフォームは、発泡断熱材の中でも特に高い断熱性能を誇る素材です。外張り工法に使用されることが多く、長期間にわたる安定した性能が期待できます。
メリット
非常に高い断熱性能:熱伝導率が極めて低く、他の断熱材よりも優れた断熱性を持つ。
耐水性:吸水率が低く、湿気による劣化が少ない。
デメリット
コスト:高価な断熱材であり、予算によっては導入が難しい場合がある。
評価
熱伝導率:★★★★★(0.020~0.025 W/m・K)
価格:★☆☆☆☆
施工性:★★★★☆(比較的軽量で施工しやすい)
経年劣化:★★★★☆
適用箇所:屋根、壁(充填工法、外張工法)、床、基礎
断熱材の「性能」は住宅の快適性や省エネ性能に大きく影響しますが、「性能」以上に大切なのは、しっかりとした「施工」です。どれほど高価で優れた断熱材を選んでも、施工が杜撰であれば、その性能を十分に発揮することはできません。逆に、性能が劣る断熱材であっても、適切に、そして十分な厚さで施工すれば、しっかりと断熱効果を発揮します。断熱材の選択だけでなく、施工の質にも十分な配慮が必要です。