「良さそうな土地を見つけたけれど、本当にここに家って建てられるのかな?」
土地探しを始めたばかりの方にとって、そんな不安はつきものです。
もちろん、住宅の建築には建築基準法や都市計画法など、いくつもの法律による制限があります。
それらの法令をクリアすることがまず大前提ですが――
実はそれだけでは不十分です。
「水道・電気・ガス」などのライフラインが整っていなければ、そもそも暮らしが成り立たないのです。
今回は、家づくりを始める前に必ずチェックしておきたい“ライフライン”に関する注意点をまとめてご紹介します。
上水道

数あるライフラインの中でも、水道は暮らしの要とも言える存在です。
そのため、土地を購入する前には必ずチェックしておきたいポイントがいくつかあります。
水道は引き込まれているか?
まず確認したいのが、敷地内に水道がすでに引き込まれているかどうかです。
「建替え」や「すでに開発された分譲地」であれば、引き込み済みであることがほとんどですが、たとえば畑だった土地や古家付きで長年使われていなかった土地などでは、水道引込み工事が必要になる場合があります。
この工事、道路に埋設されている水道本管から敷地までの距離が長いと、その分費用も高額になりやすいので注意が必要です。
水道メーターはあるか?
もうひとつ大切なのが、水道メーターがあるかどうか。
建物を新築する場合には、水道を使うための「給水装置工事」の申請とあわせて、水道加入金の支払いが必要になります。
すでに水道メーターが設置されている場合は加入金は不要ですが、口径を変更する場合(例:13mm→20mm)には差額が発生します。
水道加入金は地域によって差が大きく、
- 13mm口径:おおよそ3万円~10万円程度
- 20mm口径:おおよそ5万円~20万円程度
と、「お隣の市のほうが全然安い!」とびっくりするくらい違うこともあります。
水道まわりの状況や費用については、市区町村の水道局や役所の窓口で確認できますので、土地購入前に一度問い合わせておくと安心です。
下水道

使う水があれば捨てる水もあります。
この“捨てる水”の処理方法によって、想像以上のコスト差が生まれることがあります。ここでは、家を建てる前に確認しておきたい下水まわりのチェックポイントをご紹介します。
下水道は引き込まれているか?
敷地に下水道が引き込まれていない場合は、「下水道引込み工事」が必要になります。
この工事、自治体によっては公費でやってくれるケースもありますが、必ずしも対応してくれるとは限らず、タイミングや予算次第で自己負担になることも。
敷地のすぐ前に公設マス(公共の下水管の接続口)があれば、費用は比較的抑えられます。
しかし、公設マスが道路の反対側にある、または土地の前まで来ていないといったケースでは、引込みに100万円近くかかることもあります。
土地の現地確認では、「マンホールの位置」や「公設マスの場所」も要チェックです!
受益者負担金は支払い済みか?
「受益者負担金」という言葉も、土地を選ぶ際にはぜひ知っておきたいワードです。
これは、下水道整備によって利益を受ける人が、その事業費の一部を負担するという考え方に基づいたもので、
その土地に対して一度だけ支払えばOKというものです。
支払い済みかどうかは、役所で調べてもらえます。
費用は「土地の面積 × 数百円程度」が一般的ですが、自治体によって異なります。
そもそもマンホールが見当たらないんだけど…
敷地の前の道路に下水道が整備されていない場合は、浄化槽による処理が必要になります。
これは、敷地内に浄化槽を設置し、処理された排水を側溝などに流す方式です。
設置費用は基本的に自己負担ですが、補助金が出る自治体もあるので、事前に確認しておくとよいでしょう。
■側溝が必須
浄化槽の放流先には側溝が必須です。前面道路に側溝がない場合は建築許可が下りません。道路の反対側に側溝があれば道路横断で放流できる可能性がありますが、別途工事費用が掛かります。
■水勾配を検討する
排水のための水勾配の検討が必要です。基本的には1/100以上の勾配を確保します。側溝の深さ、建物の設計GL、排水経路の距離、浄化槽の流入出の高低差などを考慮し検討します。つまり、設計段階から詳細に検討する必要があります。勾配が取れない場合はポンプが必要になり、別途工事費用が掛かります。
■何人槽かで金額が大きく変わる
何人槽にするかで費用が大幅に変わります。一般住宅用の浄化槽には5人槽、7人槽、10人槽があり、基本的には床面積で何人槽になるかが決まります。算定方法は自治体により違いますので各自で確認しましょう。
■ブロアの設置位置を考える
ブロア(浄化槽の中へ空気を送る機械)用の電源が必要です。ブロアの設置場所を事前に検討しましょう。
■維持管理費が掛かる
浄化槽は維持管理が必要です。年に3回以上の保守点検と、年に1回以上の汚泥清掃及び水質検査(11条検査といいます)が義務付けられています。各自治体で登録業者を選定しているはずですので、必ず登録業者に頼みましょう。ちなみに、11条検査とは別に「7条検査」という法定検査もあります。こちらは浄化槽設置後8ヶ月までに受ける検査で、一度きりの検査です。
電気

電気は、生活にとって欠かせないインフラです。
電力会社には送電の義務があるので、よほどの山奥などでなければ「電気が届かない土地」というのはまずありません。
……が、「引き込み方」や「電柱の有無」によっては、思わぬ工事が必要になるケースも。
電気は引き込めるか?
建築予定地の敷地側の道路に電線が通っていればほぼ問題なしです。
ただし、道路の反対側にしか電線がない場合は注意が必要です。
道路の反対側に電線があるんだけど…
このケースでは、道路を横断して引き込むための“高さ”の確保が必要になります。
基本的には道路上で5m以上の高さを確保しなければならないため、
平屋などの背の低い建物の場合は、建物から直接電線を引くことができないことも。
その場合は、引き込みポールを使って高さを確保します。
電柱を新たに建てる場合もあり、その本数によっては自己負担になることもあるので、あらかじめ確認を。
旗ざおの土地だから、道路から建物が見えないんだけど…
電気の引き込み線は基本的に「直線」で敷地に引き込みます。
いわゆる旗竿地(細い通路の先に建物がある土地)では、引き込みが難しいケースも。
このような場合は、
- 敷地内にポールを立てて電線を受ける
- 他人の土地の上空をまたがせてもらう(※要許可)
という対応になります。
他人の土地をまたぐ際は、後々のトラブルを避けるためにも事前に必ず書面で合意を取りましょう。
ガス

オール電化を検討中の方には関係ないかもしれませんが、近年の電気代高騰をきっかけに、ガスが再注目されているのも事実。
それではチェックポイントです。
都市ガスのエリア内?
まず、建築予定地が都市ガスの供給エリア内かを確認しましょう。
エリア内であれば、道路から敷地までの引き込み工事費はガス会社が負担してくれるケースが一般的です。
(ただし、敷地内での配管やメーター設置は別途費用がかかることも)
都市ガスが来ていない場合は、プロパンガス(LPガス)での対応となります。
プロパンガスは敷地内にボンベを設置し、そこから配管して供給する方式なので、ガス会社との契約内容によっては設置費用などが実質無料になることもあります。
また、災害時の復旧が早いという意味では、プロパンのほうが有利とされることもあります。

土地選びの段階では、つい“日当たり”や“立地”に目がいきがちですが、
ライフラインの整備状況も家づくりのコストや計画に直結する超重要ポイントです。
「この土地、ステキ!…けど、水道もガスも引けませんでした…」なんてことにならないように、
ぜひ事前にしっかりと確認を!
筆者:ともぴ(一級建築士/インテリアコーディネーター)
「家づくりは、賢く・楽しく・ちょっとあざとく」をモットーに、失敗しない家づくりのヒントをブログで発信中。