色は、私たちの心に想像以上の影響を与える存在です。
「この色をこんなふうに使うと、こんな気分になる」というある種の“法則”を知っておくことは、インテリアの計画を立てるうえでも大きな武器になります。
今回は、色がもたらす心理的な効果について、家づくりに役立つ視点で解説します。
色のキホン
まずは、色の基本的な用語を解説します。
色相
色相とは、赤み、青み、黄み…などの“色み”のことです。
明度
明度とは、“色の明るさ”のことです。
明度が一番高いのは白で、一番低いのが黒です。同じ色相でも明度が違えばその色が持つ印象は大きく変わります。例えば色相が同じ緑でも、黄緑と深緑では色の特徴が全然違いますよね。
彩度
彩度とは、“色の鮮やかさ”のことです。
鮮やかな色のことを「さえた色」、その逆は「くすんだ色」と表現します。はっきりとした彩度が高い色に、白や黒の無彩色が混じることで彩度が低くなっていきます。
色の心理的効果
それでは、色の心理的効果を見ていきましょう。
色と温度
まずは定番。色には“温度”を感じさせる力があります。
暖色(赤・オレンジ・黄色など)はあたたかく感じ、寒色(青・水色・青緑など)は涼しさを感じさせます。中間色はどちらにも属さない、いわば中立的な存在。
たとえば、冬にぴったりな“ぬくもり感のあるダイニング”を演出したい場合は、壁紙に暖色系を選んだり、照明を電球色(オレンジがかった光)にするのがおすすめです。
ちなみに、色による体感温度の違いは、なんと最大で3℃前後もあると言われています。これ、けっこう大きな差ですよね。
色と面積
色は、面積が広いほど明るく、鮮やかに感じやすいという特徴があります。
つまり、カタログの小さな色サンプルで「これいいかも」と思っても、実際に壁一面に使うと「思ってたのと違う…」なんてことも。
できればA4サイズ以上の大きめのサンプルを取り寄せたり、実例写真を見るなどして、空間全体での見え方を想像してから決めるようにしましょう。
色と気分
色には、見る人の気分を高めたり、逆に落ち着かせる効果もあります。
● 暖色系(赤・オレンジなど):テンションが上がりやすい、興奮しやすい
● 寒色系(青・水色など):気持ちが落ち着き、集中力が高まる
たとえば、スタディーコーナーや読書スペースには、青系のカーテンや昼光色の照明(白く青みがかった光)を取り入れるのがおすすめです。静かに集中できる環境がつくれますよ。
色と距離
色は、空間の広さや奥行きの感じ方にも影響します。
● 進出色(暖色・明るい色):近く感じる
● 後退色(寒色・暗い色):遠く感じる
たとえば、狭めの部屋で正面の壁を赤やオレンジなどで塗ってしまうと、グッと圧迫感が出てしまいます。逆に、青みがかったグレーなどの後退色を使えば、視覚的に奥行きが出て広く感じることも。
色と重さ
色には“重さ”を感じさせる効果もあります。
● 低明度(黒・こげ茶など):重く、落ち着いた印象
● 高明度(ベージュ・パステルカラーなど):軽く、柔らかい印象
段ボールの色にベージュや白が多い理由は、荷物が重そうに見えないようにするためだと言われています。
たとえば、リビングに落ち着きや高級感をプラスしたいなら、黒やダークブラウンのTVボードや家具が好相性。逆に軽やかさを出したい空間には、明るめのカラーが向いています。
色と硬さ
意外かもしれませんが、色には“硬さ”の印象もあります。
● 高彩度・低明度(ビビッドカラー):かたい、シャープな印象
● 低彩度・高明度(くすみ系・ペールカラー):やわらかい、優しい印象
たとえば、「ナチュラルで優しい子ども部屋」をつくりたいなら、ベージュやミルクティー系などの淡い中間色で揃えるのが効果的です。
…とはいえ、黒猫は黒くてもふわふわに見える…
やっぱりネコって、色のルールを超越してますよね。恐るべし、ネコ…。
色と時間
最後に少し変わり種。
実は色によって、「時間の流れ方」の感覚も変わると言われています。
● 寒色系:時間の流れをゆっくり感じさせる
● 暖色系:時間の流れを早く感じさせる
寒色系の部屋で過ごす1時間が、40分くらいに感じられるという実験データも。趣味に没頭したい部屋や書斎には、寒色系の内装を取り入れてみるのもアリです。
…ただし、そこにネコがいたら話は別。
あっという間に何時間でも過ぎてしまいます。ネコの引力、おそるべし。
色には、感情、空間の広さ、時間感覚まで左右する、目には見えない大きな力があります。
それらを少し意識するだけで、お部屋の心地よさがぐっと変わります。
「アザトく、かしこく」家づくりを楽しむなら、色のチカラを味方につけない手はありません。
ぜひ、今回の内容を参考に、あなたらしい空間をつくってみてくださいね。
筆者:ともぴ(一級建築士/インテリアコーディネーター)
「家づくりは、賢く・楽しく・ちょっとあざとく」をモットーに、失敗しない家づくりのヒントをブログで発信中。