「基礎」という言葉を辞書で引いてみると
「ある物事を成り立たせる大もとの部分」
と出てきます。
……まさに、その通り!
住宅にとっても基礎は、まさに“成り立たせるための大もと”。
しっかりとした基礎がなければ、どんなに立派な家を建てても長持ちしません。
今回は、そんな住宅基礎の役割や種類、そして建築基準法などで定められた仕様規定(いわば一般ルール)について、わかりやすく解説していきます。
基礎の役割
住宅の基礎とは、建物の重さをしっかり支え、地盤に安定して固定するための構造物です。
地面に半分ほど埋め込まれており、その深さ(「根入れ」といいます)は、地域や地盤、基礎の種類によって変わってきます。
基礎には大きく2つの役割があります。
- 建物の重さや負荷を地盤に均等に分散すること
- 地震や地盤沈下などの外力から建物を守り、倒壊や損傷を防ぐこと
つまり、家を長く安全に使うためには、基礎がとっても大事なんです。
基礎の性質

現在の住宅基礎の主流は、鉄筋コンクリート(RC造)です。
この「鉄筋コンクリート」、名前はよく聞くけど中身はというと…
鉄筋コンクリートとは
コンクリート:押される力(圧縮)には強いけど、引っ張る力には弱い
鉄筋:引っ張る力には強いけど、押される力には弱い
つまり、お互いの苦手を補い合って最強タッグを組んでいるわけですね!
鉄筋コンクリートの寿命

古代ローマの建物「コロッセオ」など、2000年近く経っても残っているコンクリート建築がありますよね。「コンクリートって、もしかして半永久的?」と思いたくなります。
実際、コンクリート自体はとても長寿命な素材なんです。
ただし、問題は中に入っている「鉄筋」です。
鉄は錆びる素材なので、鉄筋が錆びることで基礎の耐久性が落ちていくんですね。
ちなみに、コンクリートは強いアルカリ性。
このアルカリ性がある限り、鉄筋は錆びません。
でも、年数が経つとコンクリートが徐々に「中性化」していき、やがて鉄筋が錆び始めます。
つまり、鉄筋コンクリートの寿命=中性化が進んで鉄筋が腐食し始めたときと考えられています。
ちなみに、コンクリートは「乾燥」ではなく「化学反応」によって固まります。
鉄筋のサビについて

「サビ=劣化」のイメージ、強いですよね。
「鉄筋が少しでも錆びていたらアウト!」と思っている方も多いかもしれません。
でも、実は…
鉄筋は“ちょっとだけ錆びている”ほうがコンクリートとの密着が良くて強度が上がるとも言われています。
もちろん、深くまで錆びてボロボロになった鉄筋は使えませんが、うっすら表面が錆びた程度であればむしろプラスに働くんです。
そして、コンクリートに包まれてしまえば、そのアルカリ性の力でサビの進行はストップ。
しっかり施工されていれば、簡単にダメになるものではないんですね。
基礎の設計
コンクリートの強度について
コンクリートの強度には、設計段階で指定する「設計基準強度」と,現場で打設する生コンの「呼び強度」があります。

設計基準強度
これは設計図に書かれている「この強さでコンクリートを作りましょう」という目標の強度です。構造計算で安全を見込んだ数字ですね。
呼び強度
こちらは現場で生コン(生コンクリート)を発注するときに指定する強度です。
生コン工場が「28日後にこの強度が出ることを保証しますよ」という数字で、実際には工場のミキサー車の出口で取った試験用コンクリートの強度を基にしています。
Q.「設計基準強度」と「呼び強度」はどう違うの?
一見「同じ数字でいいんじゃない?」と思いますよね。
でも、現場で打設されたコンクリートは、試験で使うコンクリートよりも若干強度が落ちる可能性があります。
そこで、強度の安全マージンとして3N/mm²(ニュートン毎平方ミリメートル)を上乗せするルールになっています。
たとえば、設計図に「Fc24」と書いてあれば、実際には「24 + 3 = 27N/mm²」の強度で生コンを発注するのが正解です。
さらに冬場などは温度が低くて強度が出にくいため、そこにさらに3〜6N/mm²の温度補正を加えて打設します。
Q.コンクリートの強度は年々上がっている?
昔は18N/mm²くらいが普通でしたが、地震などの災害を経て安全基準が厳しくなり、21N/mm²に上がりました。
最近では品質向上もあって、24N/mm²が標準になっています。
そしてこれからは、長期にわたり丈夫で安全な住宅をつくることが重視される時代。
例えば長期優良住宅のような仕様では、30N/mm²くらいまで強度が上がっていくことも考えられます。
基礎仕様の選定
基礎の種類や仕様は、土地の「地盤の強さ」によって決まります。
ここでいう地盤の強さは「許容応力度」と呼ばれ、地盤がどれだけの重さを支えられるかを示す数値です。
20kN/㎡未満 | 基礎ぐい(地盤改良) |
20kN/㎡以上 30kN/㎡未満 | 基礎ぐい、べた基礎 |
30kN/㎡以上 | 基礎ぐい、べた基礎、布基礎 |
つまり、
地盤が20kN/㎡以上の耐力があれば、地盤改良しなくても「べた基礎」が使える可能性が高い、ということです。
逆に、20kN/㎡未満の弱い地盤の場合は、地盤改良や基礎ぐい(杭など)を使って地盤を強化する必要があります。
「べた基礎と布基礎、どちらが強いの?」と聞かれることがあります。
多くの方は「べた基礎のほうが強そう」と思うかもしれません。確かに、床全面にコンクリートを敷き詰めるべた基礎は、コンクリートのボリュームが多く見えますよね。
ですが、結論から言うと「どちらが強いか」という比較自体、あまり意味がありません。
実は、地震に強いとされる大手ハウスメーカーの鉄骨造住宅の多くは「布基礎」を採用しています。一方、木造住宅では「べた基礎」を採用する会社が多いのも事実です。
これは基礎にかかる力の性質が違うためで、単純に強さの問題ではありません。
- 木造住宅
建物にかかる地震や強風の力が分散されて伝わるため、床全体で力を支える「べた基礎」が適しています。 - 鉄骨造住宅
局所的に大きな力がかかることが多いため、力のかかる部分だけを支える「布基礎」が適しているのです。
べた基礎か布基礎かにこだわるよりも、基礎自体の品質や施工のポイントを重視しましょう。
例えば、「鉄筋のかぶり厚(コンクリートと鉄筋の距離)が適切か」や「立ち上がり部分の貫通部に補強がしっかり入っているか」など、こうした細かい部分のほうが、基礎の耐久性や強度に大きく影響します。
つまり、基礎の「種類」よりも「施工の質」が家の安全を左右するということです。家づくりで基礎をチェックするときは、このあたりを意識することがアザトイ選択なのですよ!
建築基準法による設計基準
最後に、建築基準法上の仕様規定を見ていきましょう。
住宅の基礎については、建築基準法で細かい仕様が定められています。
ここでは、一般的な基礎に共通する規定と、べた基礎・布基礎それぞれに独自に定められたルールを整理して紹介します。
住宅の基礎の仕様規定
立ち上がり部分の高さ | 地上部分で30cm以上 |
立ち上がり部分の厚さ | 12cm以上 |
鉄筋のかぶり厚(地面に接する部分) | 6cm以上 |
鉄筋のかぶり厚(その他の部分) | 4cm以上 |
アンカーボルトの間隔 | 2.7m以下 (※筋交い下・土台継ぎ目には必須) |
換気口の補強 | 周囲に径9mm以上の補強筋を配置すること |
べた基礎独自の規定
根入れ深さ | 地盤面より12cm以上(※凍結深度以上) |
底盤の厚さ | 12cm以上 |
鉄筋の配置:
- 立ち上がり主筋:径12mm以上の異形鉄筋を上端・底部にそれぞれ1本以上配置、補強筋と緊結
- 立ち上がり補強筋:径9mm以上を30cm以下間隔で縦に配置
- 底盤補強筋:径9mm以上を縦横30cm以下間隔で配置
布基礎独自の規定
根入れの深さ | 地盤面より24cm以上(※凍結深度以上) |
底盤の厚さ | 15cm以上 |
フーチング幅 | 平屋建て:30cm以上 2階建て:45cm以上 |
鉄筋の配置:
- 立ち上がり主筋:径12mm以上の異形鉄筋を上端・底部にそれぞれ1本以上配置、補強筋と緊結
- 立ち上がり補強筋:径9mm以上を30cm以下間隔で縦に配置

住宅の基礎は、構造体の中でも特に重要な部位の一つです。
この記事に載せた様々な基準を守り設計を行うことはもちろん大事ですが、それよりも、設計図通りにしっかりと施工することの方がはるかに重要で難易度が高いということを最後にお伝えしたいと思います。
設計者なんかより、現場の職人さんたちに最大級の敬意を払いましょう。
筆者:ともぴ(一級建築士/インテリアコーディネーター)
「家づくりは、賢く・楽しく・ちょっとあざとく」をモットーに、失敗しない家づくりのヒントをブログで発信中。