基礎工事のアレコレ|役割や仕様規定を解説

きそ知識

基礎という言葉を辞書で調べると「ある物事を成り立たせる大もとの部分」と載っています。

住宅の基礎も、その家を“成り立たせる”ために大変重要な部分ということですね。

今回は、基礎の役割や性質、仕様規定(一般的なルール)について解説していきたいと思います。

基礎の役割

住宅の基礎とは、建物の重さを支え、地盤に安定して固定するための構造物です。

地面に半分埋め込まれており、その埋め込みの深さ(根入れといいます)は、基礎の種類や地域によって異なります。

基礎の主な役割は、建物の重みや負荷を地盤に均等に分散することと、地震や地盤の沈下などの外力に対して建物を安定させ倒壊や損傷を防ぐことです。

基礎の性質

住宅の基礎は、コンクリートと鉄筋で造られる、いわゆる「鉄筋コンクリート(RC造とも言います)」で作られることが多いです。

鉄筋コンクリートとは

鉄筋コンクリートは、鉄筋とコンクリート双方の弱点を補い合う形で成り立っています

・コンクリート …圧縮する力には強く、引っ張られる力には弱い

・鉄筋 …圧縮する力には弱いが、引っ張られる力には強い

鉄筋コンクリートの寿命

コンクリートは、とても古い時代から使われています。古代ローマの「コロッセオ」など、はるか昔に作られたコンクリート建築が未だに現存するということは、コンクリートが半永久的に保つ素材だという証明ですね。

一方、鉄筋は錆びてしまうため耐久性は保存状態によって変化します。つまり鉄筋コンクリートの寿命は、鉄筋が錆びるまでということになります。ちなみにコンクリートはアルカリ性なので、コンクリートが中性化するまでは鉄筋は錆びません。

よって、鉄筋コンクリートの寿命は、「中性化領域が鉄筋に到達して腐食し始めたとき」だと考えられています。

豆知識

ちなみに、コンクリートは「乾燥」ではなく「化学反応」によって固まります。

鉄筋のサビについて

「サビは劣化」というイメージが強いので、鉄筋は錆びてはいけないと思っている方がほとんどではないでしょうか。確かに、サビが内部まで浸食している鉄筋は使い物になりません。

しかし鉄筋の強度は、新品よりも表面が少し錆びている方が高いと言われています。サビはコンクリートと絡みやすいので、サビが全くない新品の鉄筋よりも強い基礎が作れるというわけですね。

打設後はコンクリートに含まれる「アルカリ性」でサビの進行を防ぐ効果もあります。

基礎の設計

コンクリートの強度について

コンクリートの強度には、設計段階で指定する「設計基準強度」と,現場で打設する生コンの「呼び強度」があります。

設計基準強度

構造計算に用いる許容応力度を決定した強度

呼び強度

現場で生コンを発注する時に指定する強度のことで,生コン工場が打設28日後において、その強度が出ることを保証しているもの(4週強度)

「“設計基準強度”=“呼び強度”で良いじゃん」という気がしますが、生コン工場が保証するのはミキサー車の出口で取り出した「供試体」の強度です。現場に打設されたコンクリートの方が低く出る可能性があるため、強度補正値である3N/mm2を加算する、というルールになっています。

つまり、図面に設計強度「Fc24」と書いてある場合は、実際にはそこに強度補正3N/mm2を加えた27N/mm2で打設するのが正しいということです。(さらに、冬などはそこに温度補正3~6N/mm2をプラスして打ちます。)

なお、設計基準強度は時代と共に上昇傾向にあります。一昔前の一般的な設計基準強度は18N/mm2でした。その後、震災の影響で21N/mm2まで設計基準強度は上がります。近年では、コンクリートの品質の向上が考えられるようになり、24N/mm2が一般的となっています。

長期優良住宅に代表されるように、今後は耐久性を長期に渡って保持する考え方が一般的になっていくでしょうから、30N/mm2くらいまでは上がっていくのではないでしょうか。

基礎仕様の選定

基礎の仕様は、地盤の許容応力度(改良された地盤にあっては改良後の許容応力度)によって変わります。

20kN/㎡未満 基礎ぐい(地盤改良)
20kN/㎡以上 30kN/㎡未満   基礎ぐい、べた基礎
30kN/㎡以上基礎ぐい、べた基礎、布基礎    

つまり、地盤が20kN/㎡以上の地耐力を有していれば、改良工事無しで「べた基礎」が採用できるということです。

ちょっと脱線

べた基礎と布基礎はどちらが強い? この質問、たまに聞かれます。

多くの人は「べた基礎」の方が強いと認識しているようです。

住宅会社のホームページなどにも「当社はべた基礎を標準採用しています!」などと書かれていることがありますよね。確かに床全面にコンクリートが敷かれている「べた基礎」の方が使われているコンクリートのボリュームがあって強そうです。

結論から言うと「どちらが強い」という議論は無意味です。

地震に強いと思われている大手ハウスメーカーの鉄骨造住宅は、ほとんど「布基礎」です。木造住宅は逆に「べた基礎」を採用している住宅会社が多いです。

「布基礎」か「べた基礎」かは、その基礎に載る構造体によって変わるのです。

地震や強風で建物にかかる外圧が、より分散されて基礎に伝わる木造住宅はべた基礎が適しており、局所的に大きな力を基礎に伝える鉄骨造は布基礎が適しています。

べた基礎か布基礎かを気にするよりも、「“かぶり厚”はしっかり取れているか」や「立ち上がりの貫通部にはちゃんと補強がしてあるか」などを確認する方がアザトイ選択ですよ。

建築基準法による設計基準

最後に、建築基準法上の仕様規定を見ていきましょう。

住宅の基礎の仕様規定

・立上り部分の高さ:地上部分で30cm以上

・立上り部分の厚さ:12cm以上

・地面と鉄筋のかぶり厚さ:6cm以上

・それ以外のかぶり厚さ:4cm以上

・アンカーボルトの間隔:2.7m以下(筋交い下や土台継ぎ目には必須)

・換気口を設ける場合は、その周辺に径9mm以上の補強筋を配置すること

べた基礎独自の規定

・根入れ深さ:地盤面より12cm以上(かつ凍結深度以上)

・基礎の底盤の厚さ:12cm以上

・鉄筋の配置

  • 立上り部分の主筋として径12mm以上の異形鉄筋を「上端」及び「底盤」にそれぞれ1本以上配置し、かつ、 補強筋と緊結すること
  • 立上り部分の補強筋として、径9mm以上の鉄筋を30cm以下の間隔で縦に配置すること
  • 底盤の補強筋として径9mm以上の鉄筋を縦横に30cm以下の間隔で配置すること

布基礎独自の規定

・根入れ:地盤面より24cm以上(かつ凍結深度以上)

・基礎の底盤の厚さ:15cm以上

・底盤(フーチング)の幅:平屋建ての場合は30cm以上、2階建ての場合は45cm以上   

・鉄筋の配置

  • 立上り部分の主筋として径12mm以上の異形鉄筋を「上端」及び「底盤」にそれぞれ1本以上配置し、かつ、 補強筋と緊結すること
  • 立上り部分の補強筋として、径9mm以上の鉄筋を30cm以下の間隔で縦に配置すること

住宅の基礎は、構造体の中でも特に重要な部位の一つです。

この記事に載せた様々な基準を守り設計を行うことはもちろん大事ですが、それよりも、設計図通りにしっかりと施工することの方がはるかに重要で難易度が高いということを最後にお伝えしたいと思います。

設計者なんかより、現場の職人さんたちに最大級の敬意を払いましょう。

タイトルとURLをコピーしました