住宅デザインのプロが明かす!回遊型動線の魅力【間取りシリーズ】

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住宅における回遊型動線とは、家の中の移動ルートが一方通行ではなく、循環するように設計された動線のことを指します。これにより、生活空間の効率性使いやすさが向上しやすいと言われています。生活動線において、「行き止まりがない」ということは良いことなんです。特に家事を行う空間や、日常生活のルーティーンで使用する空間で効果を発揮します。

ケーススタディ

例えば、忙しい朝の情景を思い浮かべてみましょう。

慌ただしく子供を送り出したら家事の時間&束の間のひとり時間。まずはキッチンでコーヒー用のお湯を沸かすあなた。火を付けたら洗濯機を回すために洗面室へGO。洗面室に着いた途端、玄関ドアが開く音と「水筒忘れたー!」という子供の声。あなたはダイニングに用意してあるはずの水筒を回収しに行きますが、ありません。

「ないよー!」「あ、洗面所で飲んだ!」

なぜ洗面所で飲むんだという疑問と若干の怒りを抑えながら、急いで洗面室へアイルビーバック。その道中で脱ぎっぱなしの靴下を発見し、怒りに油注入。と同時に鳴り響くやかんの音。怒りも沸点超え。靴下と水筒を素早く回収し、ダッシュで玄関へ。子供に文句を言いながら、水筒ではなく逆の手の靴下を手渡すまでがセットです。

さあ、この一連の流れを「一般的な間取り」と「回遊型動線の間取り」で、どう違うかを見ていきましょう。

一般的な間取り

一般的な間取りの場合、移動ルートが一方通行なので同じ道を行ったり来たりすることになります。ざっくり移動距離を算出すると約35m。動線を見て分かる通り、効率的とは言えません。

回遊型動線の場合

なんということでしょう。洗面室とキッチンの間に循環ルートを設けるだけで、こんなにも動線が変わります。移動距離は約25mで、一般的な間取りよりも10m(約30%)も効率化されています。これだったら、途中でやかんの火を止めることもできるかもしれませんね。

回遊型動線のメリット・デメリット

メリット

  • シームレスな家事動線となり作業効率UP
  • シンプルな動線で日々のストレスが軽減
  • バリアフリー性が高まる(車いすやお年寄りは反転が苦手)

回遊型動線のメリットは、何といっても効率が上がるということ。行ったり来たりしなくてすみますからね。仕事に家事に育児に、ただでさえ時間に追われる毎日。家事動線くらいはストレスフリーにしたいものですよね。

逆説的に言うと、不便な環境の方が二手三手先を考えて行動するクセが付くので、「脳ミソを鍛える」という観点から見ると効率が良すぎるのは良くないことなのかもしれませんね。(科学的根拠はございません笑)

デメリット

  • 通路が長くなる可能性がある
  • 部屋が狭くなる可能性がある
  • ドアや引戸などが増える可能性がある

動線を優先しすぎると、部屋の面積を削って通路を作らなければならないことがあります。動線を優先するか、部屋の広さを優先するか…。(まあ、そこは設計者の腕の見せ所ですけどね~)

あとは、2方向から出入りする部屋が確実に増えますので、ドアや引戸が増える可能性が高いです。単純にコストアップですね。

ちょっと雑学

住宅メーカーのモデルハウスは回遊型動線を採用していることが多いです。

なぜでしょうか?

これは、「回遊型動線のメリットを伝えやすくする」というのはモチロンなのですが、接客動線としても優れているからなんですね。回遊できれば、見学中に”引き返す”というムダが省けてスムーズな接客ができます。複数のお客さんが一度に見学する際にも渋滞が起こりにくいというメリットもあります。モデルハウスに回遊型動線を採用することは「理にかなっている」のです。

モデルハウスは、純粋に住むことだけを考えて設計しているのではなく、異なる要素を含んで設計されているということを覚えておきましょう。「このモデルハウスと同じ家ください!」という選択は「賢くない」ということです。

まとめ

住まい方は人それぞれです。何を重要視したいか、しっかりと優先順位を付けて計画を立てましょう。あなたが重要視する動線は何ですか?キッチンと家事室の行き来ですか?玄関から冷蔵庫までの距離ですか?

「どんな住まい方をしたいか」を考えること。これがアザトカワイイ家を建てることの第一歩です。

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